タカバシ式

いろいろなことをしていると云われるタカバシの昔のブログ…

 映画「花田少年史」試写会

試写会に行ってきたので映画レポーターとして試写の感想を…。
正直、映画サポーターでなくて良かった、というものになってしまいました。
まず、映画を観終わって大きく感じたのは、
『アニメや漫画をどうして実写化するのか、そのメリットは?』
ということです。
 
この花田少年史、原作は未読ですが、実写映画版の雰囲気は
クレヨンしんちゃん』を実写化したような感じです。
というのは、クオリティのことではなく狙ったであろう
雰囲気的なところが… 笑いあり、ドラマあり、そして
最後に涙もあり、みたいな。家族・幸せみたいな。
ただ、全体的に映画自体のテーマが見えなくなって
とても中途半端なものになっています。
  
たとえば主人公の母のセリフで、
すごくグッと来るところがあるのですが、
それも前後の変な笑いのおかげで
感情が“泣き”モードにシフトしづらい。
それでいて、まったく逆に針を振り切るほどのパワーも無い。
(音楽が必死に泣く場面を作り出しているのですが…。)
むしろ予告版で観た方が泣けるかもしれない。
「笑わせる」ということに対して意識が低い気がします。
たとえば『クレヨンしんちゃん』でいうと
観客が『クレヨンしんちゃん』であるということで、
笑いのポイントを分かっているわけで。
その上で笑うことがあると思います。
だけど、この実写のドラマはどうでしょうか。
そりゃ、西村雅彦がロンゲで出てきたら面白いけど、
それは当たり前な出落ちであって
お金を払って映画に来てそれか、と。
(このあたりの笑いの取り方というのは、
舞台に近いのかな、と思いました。)
舞台はライブで、都度アドリブらしきものが入るから
面白いのだし、うれしいのだけど、
映画で観ても興ざめなわけです。
 
あとはなぜか最初に出てくる「ドロボークエスト9」というニュース。
ドラゴンクエストにしたかったんだけど、まあ、それはね、という
ことなんだろうけど、じゃあ、こんなに大々的に
画面に映す必要があるのか、と。
アニメの中だったら「ドロボークエスト9」でもOKだと思います。
が、実写でそれをやっていると、とっても安っぽく見えてしまう。
他の描写がいくらでもあっただろうに、どうしてあれなんだろう。
その辺になんとなく稚拙なものを感じてしまったんですよね。
 
そしてCG。漫画やアニメであれば、当たり前に受け入れられる
映像も実写となるとだいぶ違ってきます。
たとえば、幽霊が海の上を歩くシーン。
背景の海と幽霊とが剥離して見えます。
その上で、幽霊が歩くたびに海面に波紋が広がるんですが、
それがずれて見えるんですね。
であれば、幽霊には歩かせずにスライドさせて
CGは無くした方が「この世のものではない」感じで
良かったのだと思います。が、そのままやっている。
…いろいろな都合もあるかと思いますが。
アニメであれば、上手い下手なく
普通に見られるものだと思うのですが…。
こういうCGが随所にあっていただけなかった。
 
なんでこれをわざわざ実写化したの?
アニメでいいんじゃないの?
もしくは、CGなしの映像でいいんじゃないの?
と、かなり疑問でした。
ま、アニメで映画化する場合には、絵のテイストを
原作と違ったものにするわけにはいかないわけですが。
でも、作品全体としてのテーマの希薄さ、
この作品のジャンルを定められない中途半端さは
確実に残りました。この映画を観たオトナやコドモに
どんな想いを伝えたかったのか…
主人公が最後に口にする「家族」というキーワード、
それを伝えるのにこの120分で良かったのか。
本当にわかりません。強いていうなら
母の想いは伝わりましたが、全体的に掘り下げ不足で
犬は? 友達の新しい父親は? あの帰結でいいのか!?とか。
「愛」というなら全部に愛を! 犬とか全然絡んでこないし!
 
では、最後にこの映画の良かったところを。
それは安藤希さんとエンディングを唄ったサンボマスターですね。
まず安藤さんは、アップの多いおいしい役でした。
心無い悪戯で主人公を危篤に追い込む等、
ツッコミどころの多い、それでいてキーになる役だったりして。
映像もかわいかったし、いろんな意味でおいしかったと。
あと、サンボマスター。曲が良かった!
ああ、あと、主人公ではなく、脇役陣の家族ドラマ。
てか、こっちがメインでいいんじゃないのか、と。
ただ、ワンパクなだけの少年には感情移入しづらいのかもしれません。
 
いやぁ、まじでこう無理に辛口に書いているわけでは
ないんですけども、こうなってしまいました。
ちなみに僕の両隣の女性はふたりとも別々の箇所で
泣いていました。彼女たちの感想も聞いてみたいところです。
ただ、僕は「笑い」「CG」のレベルを考えてみても
同じ1,000円以上を払うなら、間違いなく他の映画にしますね。
日テレは「明日の神話」のドキュメントを映画化したほうが
いろんな意味でよかったのではないのかしら?
まじで、日本の実写の映画、がんばってほしい。
こういうお金の使い方はないんじゃないだろうか。
これ、だれが幸せになる映画なんですか?
 
※ところで、北村一輝バットマンのジョーカー役に適任と思いました。
※あと、変なイメージのついた俳優さんはそれを引きずっちゃうな、と。
自転車泥棒とかさ。ああ、そりゃ自転車買ってもらえんわ、みたいな。
 
花田少年史 〜幽霊と秘密のトンネル〜
監督/水田伸生
原作/一色まこと(講談社刊)
キャスト/須賀健太篠原涼子、西村雅彦、北村一輝
安藤希杉本哲太もたいまさこ
2006年/日本/123分
http://www.hanada-shonen.com/
 
【追記】
いろんなブログを見てみると、
みんな結構「泣きました」という感じなのね。
ブログのためにそう書いている、わけでもないだろうし。
みんな、こういう家族ものに弱いのかしらね。
これが家族ものとして「良作」「泣ける」というのは、
ちょっと怖い気すらするのです。